比べるのではなく、出会うこと。 ── 侘び寂びの「五茶ペアリング」に込めた想い
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比べるのではなく、出会うこと。
── 侘び寂びの「五茶ペアリング」に込めた想い
はじめに ── 抹茶の先に、日本茶がある
海外のカフェで、抹茶ラテやスイーツが当たり前のように並ぶようになった。 ロンドンでも、パリでも、ニューヨークでも。 "Matcha"という言葉は、もはや世界共通語になりつつある。
では、日本ではどうだろうか。
皮肉なことに、「日本茶」そのものへの関心は、 まだ十分に育っているとは言えない。 煎茶、玉露、ほうじ茶、釜炒り茶── 日本茶の世界は、抹茶のその先に、驚くほど豊かに広がっている。
侘び寂びは、もともと「抹茶カフェ」ではなく、 日本茶専門店として始まった。 抹茶をきっかけにお茶への関心が高まっている今だからこそ、 その奥にある日本茶の多様さを、もっと多くの人に届けたい。
その想いの結晶が、五茶のペアリングセットである。

「飲み比べ」ではなく、「ひとつの体験」
五種のお茶を並べると、多くの方はまず「どれが一番おいしいか」を探そうとする。 けれど、このセットは比較のためにあるのではない。
ひとつの体験として、設計している。
右手から、順に。 まずは、一口ずつ。
色を見る。 湯気の揺れを見る。 香りを吸い込む。 舌に触れた瞬間の温度。 広がり。 そして、消えていく余韻。
五つの茶は、それぞれ異なる輪郭をもっている。 翡翠のような深い緑。淡く透ける黄金。やわらかな琥珀。
日本茶は、緑ひと色ではない。 その違いを、まずは静かに感じてほしい。
甘味は「混ぜる」ためではなく、「ひらく」ためにある
ペアリングセットには、茶と一緒に甘味を一皿添えている。
目の前の甘味をひと口、含む。 そして、もう一度、茶を口に運ぶ。 混ぜるのではなく、口の中でそっと重ねる。
すると、香りがほどける。 甘味によって引き出される、茶の奥行き。 単体では気づかなかった、やわらかな甘みが立ち上がる。
この一皿は、その変化のためにある。
作法はない。正解もない。 ただ、最初の一口だけは、急がずに。
一瞬の間。 それが、一服のはじまりになる。
グラスで出す理由、農園に足を運ぶ理由
侘び寂びでは、お茶をグラスで提供している。 それは、まず色を見てほしいから。
湯呑みの内側に隠れてしまう色彩を、 目の前に差し出すこと。 日本茶の美しさを、視覚からも感じてもらうこと。 それが、入口を広げるということだと考えている。
そして、五茶のすべてに共通しているのは、 オーナー自らが農園に足を運び、直接取引をしているということ。
かなり特徴のあるお茶や、普段は出会えないようなものを揃えている。 はじめての方にとっては新鮮な驚きを。 お茶に親しんできた方にとっても「こんなお茶があったのか」という発見を。
どちらの方にも、楽しんでいただけるように── そういう設計で、五種を選んでいる。
侘び寂びが目指すもの ── 通のための茶ではなく、入口としての茶
侘び寂びが目指しているのは、 通のための茶ではなく、入口としての茶。
誰もが、五感で触れられるかたち。 グラスで出すのは、色を見てほしいから。 甘味を添えるのは、香りをひらくため。 主役は、あくまで茶。
「あのお茶、おいしかったね」 「私はあれが好きだった」
そんな会話が、侘び寂びの席で生まれること。 そして帰り道にも、自宅に戻ってからも、 ふとお茶のことを思い出してもらえること。
それが、この五茶のペアリングが本当に届けたいものである。
この体験が、あなたと日本茶との最初の出会いになりますように。
侘び寂び